万引きした女子高生と昔々のお父さんの関係


その女子高生は、万引きをしてそのお店の保安員に捕まりました。有名女子高に通うその高校生は、お金に困っているようには見えませんでした。捕まった後も動揺をすることなく、保安員の指示に、素直に従いました。

捕捉をした吉中(仮名)は、ソニープラザのような若い女性が集まる雑貨店に派遣されている保安員です。保安員は、目立ってはいけません。その売り場の世代に合う服装を着て、お店に同化するようにします。自分の存在を消すように店内を窺っていました。そこに今回の女子高生が一人で、入ってきました。吉中は、最初は、普通のお客様と思いました。いわゆる万引き行為をしようとする人は、最初から負のオーラを発しています。緊張感が身体に出てきます。

それでいて、隠れたい心理が働くので、身体を小さくみせるように屈むように背中を丸め、音が出ないような歩き方をします。しかしながら、彼女は、堂々とお店に入ってきて、店内を目立つように歩いていました。ただ、少し、周りと違うと感じたのは、商品を楽しそうに選んでいるように見えなかったことです。お客様は色々な人が来店されます。自分の商品がほしい「目的買いの人」「ちょっと時間つぶし」に立ち寄った人。長年にわたり売り場で「お客様」と「万引き犯」を区分する経験を培っている吉中は、そのような人の行動心理も分かるようになっていました。吉中は、その女子高生が、万引きをするという確信がありませんでしたが、少し気になる行動だったので、後ろから「マーク」することにしました。数分が経過し、その女子高生が化粧品売り場に差し掛かると、今までとは、違い緊張感が身体に漲りだしました。少しそわそわしだし、商品を選んでいるようで、実際は、周囲の気配を気にしています。吉中は、これは間違いないと感じました。案の定、その女子高生は、かなり大胆に、3点以上の化粧品をかばんの中に入れました。ただ、それだけは終わりません。さらに緊張感はさらに続いており、店内を歩きまわると、さらに5点以上の商品を万引きしていきました。そのまま、店外にでたところで、吉中は小走りで、その女子高生の前に立ちはだかり、「化粧品を出しなさい。」とストーレートに言葉を発しました。女子高生は、一瞬、吉中と目を合わせ、驚きと恐怖の表情を見せましたが、暴れたり、大きな声を上げることもなく、吉中に従い、その大型スーパーの事務所に連れていかれました。
事務所では、捕捉された女子高生はほとんど無言です。吉中に言われるままに、商品を自分から出しました。学生証も素直に提示しています。その学生証から、県下トップの高校であることが分かりました。顔立ちや雰囲気からも育ちの良さが窺えます。本来であれば、容赦なく警察に届けるのですが、吉中は少し躊躇し、店長と相談して、親を呼ぶことにしました。この高校は、直ぐ近くにあり、警察を呼ぶのは非常に目立つのと学校側が、簡単に退学処分を下す場合もあるからです。そこで、女子高生に、「親を呼んで、来てもらう。家に電話をして良いか?」と聞くと初めて強い拒否をします。「母親には絶対に来てほしくない。」なんど説得しても「それだけはどうしてもいやだ。」と聞き入れません。子供を一人で帰宅させることはできないのは、保安会社のルールです。思案した結果、女子高生のお父さんの会社に電話をして父親に来てもらうことにしました。父親には、電話で事の次第を伝えました。
父親は、30分ほどで現れました。スーパーのバックヤードには、場違いの英国紳士風の三つ揃えスーツを着ています。事務所に入り、自分の子供が店長と保安員に囲まれるように座っている姿を見ると、そこに近寄りました。店長の前に立ち止ると、一言もしゃべらず、店長の顔を見つめました。そして意を決したように、ひざまずくと、大きな身体を床につけて土下座をしました。
「誠に申し訳ありません。私の責任です。娘を許してあげてください。」
額を床につけ、大きな身体が丸まるように小さく見えました。吉中は、驚くのと同時に、横目で女子高生を見ました。女子高生は、そのお父さんの姿を注視して動けないようでした。吉中は「もう、二度と万引きはしないだろう。一生忘れないだろう」と感じました。
店長は「分かりました。」と一言いい、清算だけして、自宅に帰しました。

店長は、吉中と二人になった時、「あの土下座は、私たちにしたのではなく、娘にしたのだろうね。」と言っていました。吉中もそうだろうなと思いました。娘を愛しているのだろうとも思いました。

2014年10月4日


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